「研究内容を簡潔に説明してください」と言われると、途端に頭が真っ白になる。
そんな経験、ありませんか?
特に、理系で人前で話すのが苦手な人(コミュ障気味の就活生)にとって、研究内容の説明は就活最大の壁のひとつです。
私自身、学会では何とかスライドを使って乗り切れたけれど、面接では言葉が出ずに落ち込んだことがあります。
ですが安心してください。研究そのものではなく、「どのように考えて取り組んだか」「どう伝えるか」が評価されるのが、就活における“研究内容”の役割です。
この記事では、元・話すのが苦手な理系就活生であり、後に採用担当として学生のESや面接に関わってきた視点から、
- 理系就活で研究内容が重視される理由
- 話すのが苦手な人がやりがちなNG例と対策
- 理系でも伝わる研究内容のテンプレと例文
- 学部・院それぞれに合わせたアプローチ法
- 話せない・書けないときの対処法
をまとめました。
なぜ理系では「研究内容」が重視されるのか?
理系の就活では、ES(エントリーシート)でも面接でも「研究内容」について問われることが非常に多いです。
これは理系学生にとっては避けて通れない項目ですが、特に話すのが苦手な人にとっては「何をどこまで説明すればいいの?」と戸惑う場面でもあります。
まずは、企業がなぜ理系学生に研究内容を尋ねるのか、3つの理由を理解しておきましょう。
この背景を知ることで、「どう伝えれば評価されやすいか」が見えてきます。
理由①:専攻と志望職種のつながりを確認するため
企業はまず、「なぜこの学生がこの職種を志望しているのか」「学んできたことと仕事がどうつながるのか」を見ています。
たとえ完全に一致していなくても、「研究を通じて得た視点が、志望職種とどう関係しているか」を説明できればOKです。
たとえば私自身、研究と職種が少しずれていたのですが、「研究で培った分析力を、課題の本質を見抜く力として活かしたい」と話したことで納得感を持ってもらえました。
理由②:「考え方」や「取り組み姿勢」が見られている
研究内容を通じて、企業が見たいのはその人の“思考の癖”や“取り組み方の姿勢”です。
- どういう問題に興味を持ったのか
- どんな工夫をしながら進めたのか
- どこでつまずいて、どう対処したのか
こういった「姿勢の部分」が伝わると、「入社後も粘り強く取り組めそう」と評価されやすくなります。
話し方に自信がなくても、具体的な工夫や考え方の変化が見えるだけで、十分に伝わるということです。
理由③:面接官の専門外でも“伝える力”を見ている
企業の面接官は、必ずしも理系出身とは限りません。つまり、あなたの研究テーマが完全に理解されることは前提になっていません。
だからこそ、「専門用語をかみ砕いて話す力」「わかりやすく整理して伝える力」が問われているのです。
これは逆に言えば、“やさしい言葉で伝える工夫”ができる人ほど評価されるということです。
話すのが得意じゃなくても、丁寧に順序立てて説明しようとするだけで、それは大きな加点要素になります。
話すのが苦手な理系学生がやりがちなNGパターン
「ちゃんと説明しなきゃ」「詳しく伝えなきゃ」と思えば思うほど、逆に伝わらなくなってしまいがちです。
それは、コミュ障気味の理系学生が陥りやすい落とし穴でもあります。
私も就活初期、まさにこのパターンで何度も失敗しました。
ここでは、話すのが苦手な人ほどやりがちな“研究内容の伝え方NG”を3つ紹介します。
これを知っておくだけでも、伝わる工夫がグッとしやすくなりますよ。
NG①:専門用語で埋め尽くしてしまい、伝わらない
「正確に伝えよう」と思って、専門用語や専門的な手法をそのまま並べてしまうパターン。
でも、相手がその分野の出身でない限り、その説明はほぼ届きません。
たとえば私が初めて話したとき、
「逆相クロマトグラフィーでタンパク質を分離して…」
と話して撃沈。
面接官に「難しいですね…」と返されて、沈黙。
このとき学んだのは、“正確さよりも理解されること”のほうが大事ということです。
このような話をする場合は、
- 複数の性質を持つ成分を分ける装置を使って…
- 特定の成分だけを取り出す方法を使って…
といったように、専門的な言葉を使わず説明することが大事です。
NG②:「やったこと」だけで終わり、学びが見えない
「〇〇の実験を行い、△△という結果が得られた」とだけ説明してしまうパターンです。
これもよくありますが、“それであなたは何を考えたの?”が抜け落ちると、評価にはつながりません。
企業が見ているのは、
- なぜその方法を選んだのか
- その結果から何を考えたか
- 何かを改善しようとした工夫があったか
といった、思考のプロセスや学びの姿勢です。
研究が成功していなくても、「失敗からどう考えたか」が伝われば、むしろ好印象になることもあります。
NG③:「何が課題だったか」がぼやけてしまう
研究テーマの背景や課題設定があいまいなままだと、聞き手は「なんのための研究だったの?」と感じてしまいます。
特に面接では、
- 「どんな問題意識を持っていたか?」
- 「誰のために役立つ研究なのか?」
という前提がないと、話がふわっとして伝わりづらくなります。
ポイントは、“研究の目的”を一言で言えるようにしておくことです。
それだけで、話全体がぐっとわかりやすくなります。
理系コミュ障でも伝わる研究内容のES構成テンプレ
「うまく話せないからこそ、文章で伝えたい」
そんな理系のコミュ障就活生にとって、ESでの研究内容記述は準備すれば確実に成果が出るパートです。
大事なのは、難しい言葉や高度な内容ではなく、“わかりやすい順序で構成すること”です。
以下の5ステップにそって書けば、どんなテーマでもしっかり伝わる内容になります。
1. 結論:どんな研究をしていたか(目的・テーマ)
最初に、研究の目的やテーマをシンプルに書きます。
私は、植物の成長に影響する光の波長について研究しました。
一言で「何の研究か」が伝わるようにするのがポイント。
2. 背景:なぜその研究に取り組んだのか(課題意識・興味)
研究テーマを選んだ理由や、興味を持ったきっかけを説明します。
授業で光合成の仕組みを学ぶ中で、光の種類によって成長に差が出るという話に興味を持ちました。
「授業で触れて興味を持った」「社会的に重要だと感じた」など、正直な理由でOKです。
3. 方法:どんな手法・工夫をしたか(分かりやすく言い換える)
具体的な手法や自分が担当した作業内容を説明します。
異なる波長のLEDを使用し、植物の成長の様子を比較しました。
ここでは専門用語を避けて、“何をどうしたか”が一般の人にも伝わる表現を心がけます。
4. 結果:得られた成果・気づき
研究の成果や、そこから気づいたことをまとめます。
赤色光で最も成長が促進される傾向があり、波長による影響の大きさを実感しました。
成功かどうかに関係なく、「観察から得た学び」や「予想外の発見」などを入れると深みが出ます。
5. 学び:そこから得た考え方、今後どう活かすか
最後に、研究経験から学んだ姿勢や考え方を示し、それを就職後にどう活かしたいかに少し触れて締めます。
仮説を立て、検証しながら改善していく姿勢が身につきました。
今後も課題に粘り強く向き合う姿勢を大切にしたいです。
このテンプレを使えば、話すのが苦手でも、順序立てて伝える力を見せることができます。
「何を話すか迷う」より、「どう整理して伝えるか」に集中しましょう。
「自分の話が浅いかも…」と感じてしまう方には、こちらで“中身のある話”にするための構成の工夫を紹介しています。

学部卒のコミュ障学生向け|研究経験が浅くても書ける3つの工夫
「学部生だし、研究って言えるほどのことはしてない…」
「ほとんど教授や先輩の指示通りに動いただけ…」
そんな不安を抱えている学部卒の就活生は多いと思います。
特にコミュ障気味だと、「自分の言葉で説明するなんて無理」と感じやすいですよね。
でも大丈夫。研究の“成果”や“すごさ”ではなく、“どう取り組んだか”を丁寧に伝える工夫をすれば、しっかり評価されます。
ここでは、経験が浅い学部生でも伝わるようにするための3つの工夫をご紹介します。
工夫①:実験の“プロセス”をストーリー仕立てにする
「データを取って終わり」ではなく、どういう課題に向き合って、どんな流れで取り組んだかをストーリーにすることで、自分らしい内容になります。
最初はデータが安定せず、先輩に相談して測定条件を変えてみたことで改善した
というように、つまずき → 工夫 → 改善の流れを描くだけで、取り組み姿勢が伝わります。
コミュ障の人でも、“体験を振り返る”スタイルなら準備しやすいはずです。
工夫②:班での分担を「自分が担当した部分」に絞って話す
グループでの研究や実験の場合、「ほとんど自分の成果じゃない」と感じるかもしれません。
ですが、自分が担当した工程や工夫したことだけに絞って話せばOKです。
私はデータの整理とグラフ化を担当し、見やすくなるようレイアウトを工夫しました
のように、どんな小さな部分でも“自分がどう考えて動いたか”を伝えることで、ちゃんとアピールにつながります。
工夫③:「なぜこの研究室に入ったか」から導入する
研究内容が浅くても、「どういう動機でその研究室を選んだか」を最初に入れると、話全体に“主体性”が生まれます。
人の動作を数値化する研究に興味があり、その分野に取り組んでいる研究室を選びました
のように書くと、内容そのものが浅くても「自分で選んで取り組んだ」という姿勢が伝わります。
学部卒で研究が浅くても、「自分の関わった部分をきちんと伝える」「取り組む姿勢を言語化する」ことができれば、面接官にはしっかり響きます。
院卒のコミュ障学生向け|面接で聞かれるポイントと対策
大学院まで進学すると、「それだけ研究してたなら、しっかり話せるよね?」と企業側からの期待値も少し高くなります。
だからこそ、話すのが苦手な院卒就活生にとっては、「ちゃんと説明しなきゃ…」というプレッシャーが強くなりがちです。
ですが、院卒の面接で見られているのは“説明のうまさ”ではなく、“どんな姿勢で研究に向き合ってきたか”と“伝える努力ができているか”。
ここでは、コミュ障気味の院卒理系学生が押さえておきたい3つの面接ポイントと対策を紹介します。
ポイント①:成果より「困難への取り組み方」を重視される
企業が注目しているのは、「すごい成果を出したか」よりも、研究の中で困難をどう乗り越えようとしたかです。
装置の不調でデータが取れず、条件を変えて地道に試行錯誤した。
シミュレーション結果が仮説と違い、論文を追加で読み直して見方を変えた。
といったエピソードは、「粘り強く向き合える人材」として非常に高く評価されます。
話すのが得意じゃなくても、“体験”を丁寧に振り返って伝えることができれば十分です。
ポイント②:「専門外の人にも伝わる説明力」が評価される
院卒になると、専門分野がかなり深くなる分、逆に企業の面接官(特に人事や営業職の方)にとっては「まったく理解できない話」になることもしばしばです。
そこで評価されるのが、専門用語を使わず、誰にでもわかるように説明できるかという姿勢です。
複雑な数式や理論を説明するより、“どんな問題を解決したい研究なのか”を一言で言う練習をしておくといいですね。
この“かみ砕き力”は、実は説明が苦手な人ほど丁寧に準備するので、むしろ武器になります。
ポイント③:学会・発表経験の“話し方の型”を用意しておく
もし学会発表や研究室内プレゼンの経験があるなら、それを就活用にアレンジして使いましょう。
おすすめは
- 「どんな課題を扱ったか」
- 「何を目的にして、どんな方法で進めたか」
- 「発表でどんなことを伝えようとしたか」
- 「そこで得た気づきや学び」
という型で話すことです。
この流れをテンプレとして準備しておけば、面接での“話しながら焦るリスク”をかなり減らせます。
院卒でも、難しい話を無理に詰め込む必要はありません。
大事なのは、“伝える努力”が見えること。丁寧に話そうとする姿勢は、必ず相手に伝わります。
例文|理系コミュ障就活生のための研究内容サンプル
ここでは、理系の就活で使える「研究内容」ESの例文を3つご紹介します。
「話すのが苦手」「専門用語が多くてうまく説明できない」と悩む人でも、シンプルで分かりやすく書ける構成になっています。
また、各例文の後に、面接官としての視点から見た「評価されるポイント」も解説します。
例文①:学部での基礎研究をテーマにした例文(シンプル型)
私は、「植物の成長に影響を与える光の波長」について研究しました。
授業で光合成の仕組みに興味を持ち、異なる波長の光が成長にどう影響するのかを検証してみたいと考えました。
実験では、赤色・青色・白色のLEDを使い、光を当てた植物の成長速度を比較しました。
赤色の光で最も成長が促進されるという結果が出て、波長の違いが明確に表れることに驚きました。
この経験から、「仮説を立てて検証するプロセスの面白さ」や「環境によって結果が大きく変わることの奥深さ」を学びました。
今後は、課題に対して丁寧に条件を確認しながら取り組む姿勢を大切にしていきたいです。
学部レベルの研究としてはシンプルですが、仮説→検証→考察という基本的な流れがきちんと見えています。
また、「環境によって結果が変わる」という視点は、企業での応用にもつながる考え方として高評価です。
例文②:研究室選びから書き起こす例文(文脈型)
私は「高齢者の歩行支援を目的としたセンサ開発」に関する研究に取り組んでいます。
元々、身体の動作を計測する分野に興味があり、その応用として福祉機器に携われる研究室を選びました。
研究では、加速度センサを用いて歩行中の体の揺れを数値化し、転倒リスクの予測モデルを構築することを目指しました。
実験ではセンサの位置によって測定精度が大きく変わることが分かり、最適な装着位置を見極めるために繰り返し調整を行いました。
この過程で、データだけでなく“人間の感覚とのズレ”にも配慮する必要性を強く実感しました。
今後も「数値だけで完結しない現場感覚」を意識して、課題に取り組んでいきたいと考えています。
研究室選びから話が始まることで、テーマへの興味・主体性が伝わりやすくなっています。
また、「人間の感覚とのズレへの配慮」という視点は、現場対応力や実務適性を感じさせる重要な要素です。
例文③:院での応用研究をわかりやすく言い換えた例文
私は、「高分子材料の劣化メカニズムの解明と寿命予測」に関する研究を行っています。
社会インフラの老朽化が進む中で、構造材料の耐久性を高める必要性を感じ、このテーマに取り組みました。
実験では、紫外線照射や加熱処理による劣化試験を行い、その際に発生する化学変化をスペクトル解析で調査しました。
初期は測定条件が安定せず苦労しましたが、照射時間と温度の制御法を見直すことで再現性の高い結果が得られるようになりました。
この経験を通じて、「失敗を前提に設計を見直す姿勢」や「環境要因の制御による信頼性向上」の重要性を学びました。
今後は、研究で得た分析力と再現性へのこだわりを、製品開発や品質管理の現場で活かしていきたいと考えています。
専門的な内容をわかりやすくかみ砕いており、「相手に合わせて伝えよう」という姿勢が強く伝わってきます。
加えて、「苦労した点」と「それをどう改善したか」が具体的で、問題解決力のアピールにもなっています。
【コミュ障向けの対処法】話すのが苦手でも伝える方法はある
「文章なら何とか書けても、面接で研究内容を話すのは無理…」
そう感じる理系のコミュ障就活生は少なくありません。
私自身、ESには自信があったのに、面接でいざ話そうとしたら言葉が詰まって焦ってしまった経験があります。
でも、話すのが苦手でも“伝える方法”はあります。大事なのは、「話し方」ではなく「準備の仕方」を工夫することです。
ここでは、話すのが苦手な人でも実践しやすい3つの対処法を紹介します。
対処法①:「一言まとめ」だけ覚えておくと焦らない
研究内容をすべて詳細に話そうとすると、頭が真っ白になります。
そんなときに助けになるのが、「研究内容を一言で言う」フレーズを用意しておくことです。
私の研究は、“光の波長による植物の成長への影響”を調べるものです。
この“ひとこと要約”があれば、面接官から「詳しく教えてください」と聞かれてから落ち着いて説明を始められます。
いきなりすべてを話そうとせず、入口だけを覚えておくのが、コミュ障就活のコツです。
対処法②:「実験で感じた疑問・工夫」を先に書いてから全体を構成
書くのが苦手な人も、「このとき困った」「こうしてみたらうまくいった」という体験は思い出しやすいはずです。
だからこそ、結果や理論からではなく、“自分が動いた瞬間”から書き始めてみるのも効果的です。
実験でなかなか再現性が出ず、測定条件を少しずつ変えていったところ安定してきた
このような“自分の行動”から逆算して「なぜそうしたか」「何を目的にしていたか」を書き足していけば、自然な流れで伝わる文章が出来上がります。
対処法③:「研究内容=自分の姿勢や考え方」を伝えると割り切る
「内容に自信がないし、話し方も不安….」
そんなときは、“研究の中でどう考えたか”“どう乗り越えようとしたか”を伝えることを目的にすると気持ちがラクになります。
面接官も、“伝える努力をしているかどうか”をちゃんと見ています。
内容が難しく伝えきれない部分もあるかと思いますが、自分としては〇〇に重点を置いて取り組みました
と前置きしてから話すだけでも、誠実さと準備の姿勢が伝わり、面接の空気が和らぐことがよくあります。
「研究だけでなく、自分の強みも同じように伝えられるか不安…」という方は、こちらで“話さずに伝える自己PRのコツ”を確認してみてください。

まとめ|専門性より“伝え方のやさしさ”が評価される
研究内容の説明は、理系就活の大きな山場です。
でも、それは「専門的なすごい研究をしている人が有利」という意味ではありません。
実際、採用担当として多くの学生と接してきた中で印象に残っているのは、“難しい話をやさしく伝えようと努力していた学生”や、“自分なりの言葉で一生懸命話していた学生”でした。
- 言葉に詰まったけど、正直に「うまく説明できるかわかりませんが…」と前置きしてくれた人
- 内容は難しくなかったけど、“どう考えたか”を丁寧に話してくれた人
- 成果よりも、考えたプロセスや向き合い方を話してくれた人
- 専門用語を使うよりも、噛み砕いて伝えようとしてくれた人
こういった姿勢で挑んでくれる人こそ、企業は“この人と働きたい”と思うのです。
理系コミュ障就活生の業界研究のポイントは以下の記事でまとめています。
